安房直子作<月夜のテーブルかけ>
(前略)・・・『ようこそ、ゆきのしたホテルへ』
と、黒々と書かれていましたから、私たちはやっと、目的地についたのだと知りました。
そこは、山の高みの、ひらけた場所でした。まわりを木に囲まれた、静かないい場所でした。けれども、ホテルの建物など、どこにもなく、ただ一面、びっしりとユキノシタのはえた地面の上に、まっ白の四角い布が、ひろげられていたのです。(後略)
児童文学作家、安房直子さんの童話「月夜のテーブルかけ」からイメージしました。
ある日。川でテーブルかけを洗っていたたぬきを見つけました。
彼は実は「ゆきのしたホテル」の支配人(?)です。
月夜の晩にゆきのしたホテルに招かれました。さて、どんなお料理が出てきたでしょう。そして、たぬきはバイオリンでモーツアルトを弾いておもてなししてくれました。
ユキノシタの葉っぱって、ふっくりしていて、一面に毛が生えていてモフッとして、まるでたぬきのようです。安房直子さんは同じようにゆきのしたの葉っぱを触って、やっぱりたぬきを連想されたのかなあ。
お料理にはゆきのしたの天ぷらや、タンポポのサラダ、ユキザサのおひたしと他にも、、、。本当に美味しそうです。料理そのものを描いても何かわからなくなるので、葉っぱのまま絵にしました。
ユキノシタの天ぷら、大好きです。野草料理は栄養もあって、好きな野草を見つけたら嬉しくなります。
安房直子作 「ふろふき大根のゆうべ」
【「さあさあ、えんりょしないで食べてください」
そう、あかね山のいのししがいいますと、三日月山と、日の出山は、うれしそう
に、おはしをとりあげました。
茂平さんも、おはしをとって、なべの中から、大根をひとつとりだしてみて、
おどろきました。その大根の輪切りの厚いことといったら、まるで、木の切り株みたいなのです。
「大きすぎるねえ。これじゃ、食べにくいよ」
と、茂平さんがいいますと、となりで、三日月山のいのししが、とんでもないと
いう顔をしました。
「いえいえ、これくらい厚く切りませんと、いいゆげがでません」
「ゆげ?」
「はい、ゆげです。ふろふき大根の会で、いちばんたいせつなのは、このゆげな
のです」】
いのししがにんげんみたいに、集まって食事会をするユニークさと
それを何の違和感もなく受け入れるにんげんの茂平さん。
ふろふき大根のアツアツの湯気。あったかくて、ちょっぴりさみしさもあって、ほっこりする物語です。湯気の向こうに見えたものは…
暑い時期に季節ハズレの絵だけどね。
色が気に入らなくて、上から塗り直したり、白い紙なのにさらに白を塗ったり。いつものように時間かかってしまった。見る人にはわからなくても、印刷されたら大差なくても、色のこだわりってあるんよね。(バックのホワイトも塗っています^^)
<火影の夢>
ある日、偏屈で頑固な骨董品屋の老人の元に
若い船員が「だいぶ前の航海の時に、
地中海の小さい島で島の巫女から手に入れた妙な品物」をもってきます。
それは小さなおもちゃのようなストーブでした。
このストーブを老人に預けて、船員はお金を借りようとします。
しかし、老人はあきれて「これがストーブであること」を信じません。
そこで、船員が火を灯すと明るんだ机の上に小さな人影が現れます。それは若い娘でした。
いつしか老人はこのストーブに夢中になり、船員に返したくなくなります。
児童文学作家・安房直子さん作「火影の夢」の登場人物、船乗りと骨董品屋の老人、魔法にかけられた娘、です。
…「むかし、地中海だか、北海だかに大きな津波があって、海辺の町がすっぽり海に飲まれてしまった。外国じゃ、有名な話」と骨董品の店に来た船員は店主の老人に話します。
読んだ時にふと思いました。「もしかしたらこれは260年前のリスボン地震の被害のことなんじゃないかなあ」って。
もちろん、勝手にわたしが感じたことです。安房直子さんが意識されていたかどうかわかりません。
他にも魚のスープの話もあって、勝手に舞台はポルトガルと思ってしまいました。そうしたら、イメージが湧いてきて絵にしたくてたまらなくなりました。ポルトガルの町並みや工芸品のニワトリの置物、教会のイメージ。帆船。物語に出てくるストーブや桜の花の燃料、魚のスープとサフラン(足元の花)。船員のカルタ。銀の魚のアクセサリー。もうイメージがどんどん湧いてしまって仕方ありません。物語世界を勝手に膨らませて描きました。
安房直子さんの物語はこのように、とても絵のイメージが湧いてくるんです。
でも、イメージは人それぞれ違いますからね。わたしの勝手なイメージを楽しんでいただけたらありがたく思います。
これから印刷をお願いしてポストカードにしてもらいます。
そして東京都豊島区のプラネットハンドさんで秋に開催される「秋の市:安房直子作品から」にポストカード出品します。