2023-06-09
新作


ある日、偏屈で頑固な骨董品屋の老人の元に
若い船員が「だいぶ前の航海の時に、
地中海の小さい島で島の巫女から手に入れた妙な品物」をもってきます。
それは小さなおもちゃのようなストーブでした。
このストーブを老人に預けて、船員はお金を借りようとします。
しかし、老人はあきれて「これがストーブであること」を信じません。
そこで、船員が火を灯すと明るんだ机の上に小さな人影が現れます。それは若い娘でした。
いつしか老人はこのストーブに夢中になり、船員に返したくなくなります。
児童文学作家・安房直子さん作「火影の夢」の登場人物、船乗りと骨董品屋の老人、魔法にかけられた娘、です。
…「むかし、地中海だか、北海だかに大きな津波があって、海辺の町がすっぽり海に飲まれてしまった。外国じゃ、有名な話」と骨董品の店に来た船員は店主の老人に話します。
読んだ時にふと思いました。「もしかしたらこれは260年前のリスボン地震の被害のことなんじゃないかなあ」って。
もちろん、勝手にわたしが感じたことです。安房直子さんが意識されていたかどうかわかりません。
他にも魚のスープの話もあって、勝手に舞台はポルトガルと思ってしまいました。そうしたら、イメージが湧いてきて絵にしたくてたまらなくなりました。ポルトガルの町並みや工芸品のニワトリの置物、教会のイメージ。帆船。物語に出てくるストーブや桜の花の燃料、魚のスープとサフラン(足元の花)。船員のカルタ。銀の魚のアクセサリー。もうイメージがどんどん湧いてしまって仕方ありません。物語世界を勝手に膨らませて描きました。
安房直子さんの物語はこのように、とても絵のイメージが湧いてくるんです。
でも、イメージは人それぞれ違いますからね。わたしの勝手なイメージを楽しんでいただけたらありがたく思います。
これから印刷をお願いしてポストカードにしてもらいます。
そして東京都豊島区のプラネットハンドさんで秋に開催される「秋の市:安房直子作品から」にポストカード出品します。
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